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洲脇武志（実践女子大学非常勤）
中国前近代の学問は官製の「太学」を始め、様々な場所において継承・発展していったが、六朝時代では主に「家族（門閥）」がその中心となり、「家学」と呼ばれて継承・発展していた。この六朝時代の家学については、既に吉川忠夫氏を始めとする先学によって研究され、当時の家学及び学問の特徴について明らかにされている。先行研究では、順陽の范氏（范寧・范曄）、河東の裴氏（裴松之・裴駰・裴子野）、呉興の姚氏（姚察・姚思廉）・琅邪の顔氏（顔之推・顔遊秦・顔師古）などが取り上げられているが、当然「家学」を持つ一族は他にも多数存在する。例えば、六朝後期から初唐という、姚氏・顔氏と同時期に活躍した高陽の許氏（許懋・許亨・許善心・許敬宗）も学問の継承が認められ、家学を有していたと考えられる。
許氏一族は晋の南遷と共に江南へ移住し、代々南朝に仕えてきた。しばらくは正史に立伝されるような活躍をした人物は登場しないが、南斉・梁に仕えた許懋（きょぼう）から立伝されるようになる（『梁書』）。以後、梁・陳に仕えた許亨、陳・隋に仕えて礼楽制度の制定に活躍した許善心、そして隋・唐に仕えて礼制度制定や数々の文化事業に参加した許敬宗と、学術に優れた多くの人物が登場するようになる。
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原田直枝（南山大学）
「撰征賦」は、同じく長編の「山居賦」とともに『宋書』謝靈運傳所収で伝わるが、謝靈運の詩文の中に在って、山水を詠じる諸篇や、自注を付して独特のスタイルをとる「山居賦」などに比して、文学史的検討の対象とされることは少ない。ところで、この「撰征賦」は、漢代以来の賦史に一角を占める「紀行」「行旅」賦と「武功」賦との流れの中に位置づけられる存在でもある。こうした賦史を踏まえる立場から、全体の構成や、そこに取り込まれている文学史上のさまざまな要素の分析を通して、「撰征賦」とは何か、そして、「撰征賦」から見えてくるものの若干について考察してみる。一般に予想されがちな、いわゆる発展の跡づけには当てはまらないものの、晉宋の時期における賦の在り方の一端を窺い、ひいてはまた、他ならぬ謝靈運の筆力というものを確認する材料にできるのではないか。こういったことについて述べてみたい。
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③「顔之推の仏教信仰」
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顔之推は、南朝仏教の全盛期である梁の武帝期に多感な青年時代を過ごす一方で、北周武帝の廃仏を目の当たりにしている。仏教信者の家に生まれた顔之推は、こうした生涯の中で、どのような仏教信仰を抱いたのであろうか。本報告は、『顔氏家訓』帰心篇を中心として、儒教と仏教、三世輪廻と孝、国家と仏教という三つの側面から顔之推の仏教信仰の特徴を明らかにするものである。