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『文選』の編纂については、これまでにも多くの専論がある。しかし、その多くは『文選』採録作品の底本に関する議論であり、何故これらの作品が採録されたのかという点はさほど注意されなかった。むしろ、昭明太子自身が述べた「文質彬彬」や「沈思翰藻」などの評語に基づき、いわゆる名作が選択されてきたと安易に考えられる傾向にあったと言える。しかし、『文選』採録作品が如何なる経緯で選択されたかという問題については、より具体的に考える必要があるように思われる。
本発表は、『文選』に収められた賦作品を主な考察対象とするが、「三都賦」は格好の例として挙げられる。「三都賦」は、梁簡文帝の息子である蕭大圜や梁元帝の母である宣修容ら梁王朝の皇族層に読まれており、また誤った注釈が存在するほどにその注釈が広範囲にわたって流通していた。このように『文選』には、該書が編纂された梁代に間違いなく読まれた作品が採録されているのである。したがって、『文選』賦類の採録作品について、六朝期、とりわけ梁代における作品の受容、或いは作品への評価との関わりを考察する必要が生じるのである。
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池田 恭哉(香川大学)
北魏の甄琛は、『魏書』巻68・列伝第56に立伝され、孝文帝・宣武帝・孝明帝の三代に仕えた。誰もが知るビッグネームではないが、彼の事績をたどると、殊に孝文帝の洛陽遷都後の北魏が直面した課題や、それを取り巻く北朝士人社会の様相が浮き彫りになるのではないか。以下にその着眼点と展望を述べる。
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2.孝文帝の時代、姓族分定が行われ、北魏の身分階層化が促進された。この動きの中で、甄琛には『姓族廃興』なる著作があった。また彼は定州大中正、吏部尚書として人材登用の面でも施策を打ち出した。北魏の身分階層化と人材登用のあり方について、甄琛という人物を通じて探りたい。
3.甄琛には家誨二十篇もあった。これは一篇も伝わらないが、彼の伝などには息子への訓戒も見える。また高名な文人・邢臧の手に成る行状が甄琛にはあり、それが家人の情報を鵜呑みにしたものと批判されている。加えて甄琛における上記の姓族の廃興への関心や、「孝」に立脚した弟との同居のエピソードなどを交えて、北朝士人にとって「家」が有した意義の一端を描出したい。
4.彼にはまた著作『磔四声』があった。これは空海『文鏡秘府論』にかなり引用され、沈約の四声に関する論を批判する。だが彼は孝文帝の時代、主客郎として南朝人と交流し、北朝文士たちと詩書を往来するグループを組織した。北朝文壇の実態を、音韻や文士間での交流という観点から考察したい。
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③劉宋の七夕詩について
渡邉 登紀(日本大学)
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